格安SIMはなぜ安いのか
2026-09-16 更新
MVNO は自分では基地局を持たず、大手キャリアの設備を借りています。借り方は回線の容量で払う形と回線の数で払う形の2本立てで、その値段は総務省が毎年検証しています。
借りる会社と、貸す会社
日本で携帯電話のサービスを出している会社は、二つに分かれます。自前の基地局と、国から割り当てられた周波数を持っている会社と、その設備を借りてサービスを出している会社です。前者を MNO、後者を MVNO と呼びます。「格安SIM」と呼ばれるサービスのほとんどは後者にあたります。
総務省が四半期ごとにまとめている契約数の集計では、移動系通信の契約に占める割合は、NTTドコモが32.9%、KDDI グループが26.2%、ソフトバンクが18.7%、楽天モバイルが3.6%、MVNO が18.5%でした(令和7年度第4四半期、2026年3月末時点)。5件に1件近くが、基地局を持たない会社との契約です。会社の数でいうと、MNO から直接借りている一次 MVNO が771、そこからさらに借りている二次以降が1,299と集計されています。SIM カード型のサービスでは、インターネットイニシアティブが24.9%、オプテージが8.2%、NTTドコモ(旧NTTレゾナント)が5.6%、NTTドコモビジネスと日本通信がそれぞれ4.8%と並びます。
格安SIM で通話やデータ通信をするとき、電波を出しているのは MNO の基地局です。本サイトの街ごとのページに並ぶ基地局の数も、この4社が届け出たものです。
借り方は2本立て
MVNO が MNO の設備を使うときに払うお金を接続料といいます。総務省の検証資料では、データ通信の接続料は大きく2種類に分けられています。一つは回線の容量にかかるもので、10 Mbps あたり月いくら、という単位で決まります。もう一つは回線の数にかかるもので、1回線あたり月いくら、という形です。ほかに SIM カードの枚数にかかるものや、音声の通話にかかるものもあります。
容量で借りる側から見ると、この仕組みは太さの決まった管を借りることに近い形になります。契約者が増えても管は勝手に太くなりません。太くするには接続料を多く払うことになり、逆に細いままにすれば1契約あたりの原価は小さくできます。
値段は毎年検証されている
接続料は会社が好きに決められるものではなく、算定の方法が定められていて、その水準を総務省が毎年検証しています。情報通信審議会の接続政策委員会に出された「モバイル接続料の検証について」(令和6年5月10日)には、大手3社のデータ接続料の推移が1枚の図にまとめられていて、2025年度までは低減の傾向が続き、2026年度は費用の配分を見直した影響で一部の事業者では上がる見込み、と書かれています。年度ごとの水準は、10 Mbps あたりの月額(万円)という単位で示されています。
なお、会社ごとの金額が並んだページには「構成員限り」という注記が付いた審議会内部の配布資料が含まれるため、本サイトでは各社の金額は扱っていません。
安さが生まれる三つの場所
安さの出どころは、大きく三つに分けられます。
一つ目は、基地局を建てて維持する費用を持たないことです。全国に局を建て、電気を送り、故障に備え、新しい世代に更新していく費用は MNO の側にあります。MVNO が払うのは、その設備を使わせてもらうための接続料です。
二つ目は、借りる容量を絞れることです。接続料は借りた容量に応じて増えるので、容量を抑えれば1契約あたりの原価は下がります。同じ月額でも、どれだけの容量を用意しているかは会社によって違います。
三つ目は、店舗と人手を持たないことです。申し込みを web に寄せ、電話や対面のサポートを薄くすれば、そのぶんの費用は減ります。
三つとも、安さと引き換えに何かを手放す形になっています。二つ目が使い勝手として出てくるのが、昼休みなどに速度が落ちる現象です。その仕組みは昼に遅くなるのはなぜかで書いています。
出典: 総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和7年度第4四半期(3月末))」(令和8年7月10日公表、https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000278.html 、別紙 https://www.soumu.go.jp/main_content/001081665.pdf )、総務省 情報通信審議会 接続政策委員会「モバイル接続料の検証について」(資料84-1、令和6年5月10日、https://www.soumu.go.jp/main_content/000945770.pdf )、総務省「電気通信事業分野における市場検証」の索引(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyousouhyouka/kekka.html )。
ほかの読みもの
この記事は総務省の公開資料と各社の公表にもとづいて書いています。料金や提供の条件は変わることがあるので、契約の前には各事業者の案内が確かです。